火曜日, 1月 27, 2009

外交官のプロトコール

しばらくブログの書き込みをしませんでした。

来年度、つまりこの4月からなんと三重大学の理事・副学長をすることとなりました。情報・国際担当です。すでにその準備に追われている状況です。

その準備の一環でFD関係のやりとりをしていてちょいと思い出したことを以下に書きます。

私は以前は科学技術庁管轄の特殊法人日本原子力研究所(当時)に勤めていて、そこでは通常の研究員から副主任研究員(40歳頃)、さらに主任研究員(50歳頃)に上がる際には昇進試験と、それをパスした後には研修がありました。入所当初にはオリエンテーション、初任者研修がありました。

昇進試験はそれまでの研究成果をレビュー論文として研究所報告にまとめることと、その内容についてのプレゼンをすることからなります。プレゼンは所長や理事を前にぴったり10分でするというものです。1秒でもオーバーすると大幅減点となります。

研修は富士山麓の保養所で1泊だか2泊したと思います。その研修のメニューの一つとして記憶に残っているのが以下です。研究所の人事担当が外務省に依頼したのでしょう、外交官の卵らしい若い人が、我々研修生(年上で理学博士や工学博士で研究一筋の人達)に対して「2対2で売り手と買い手に別れてある物の値段交渉をして下さい。」という風に指示を与えました。何がなにやらわかりませんでしたが、それぞれ相談し、値切ったり拒んだりを繰り返して全グループで値段が決まり、一休みしたところで始まったのが標記のタイトルの講演です。講演の内容は一言で言いますと「交渉とは自分が一番有利な条件を追求しあうことではない。双方が一番満足できる接点を探し求めることである。」ということです。他の研修内容は忘れてしまいましたが、これは忘れなくて結構その後に役立っているように思います。三重大風に言いますと私のような専門馬鹿にコミュニケーション力のスキルの一つを伝授いただいたと言うことだと思います。

大学に異動して驚いたのは着任後何のオリエンテーションも研修もない、昇進する際も書類審査だけ、研修がないということです。着任時、引っ越しと諸々の手続きが大体終わったと思ったらなんらの説明もなくいきなり「明日から授業をやれ」でした。大学内でも上記のようなオリエンテーション、昇進試験や研修があれば大学の方針を理解し、もっと周りと協調しつつ活躍されていたのではないかと思われる方がぽつぽついらっしゃると感じます。

非常勤講師についても三重大学の教育方針(4つの力やPBL)を理解いただく機会(三重大学の教育方針を書いたパンフを渡すなど)して意識いただく必要がありますね。これは三重大学の教育方針を周知、拡げていくことにもなります。

日曜日, 7月 13, 2008

熊野学生ベンチャー合宿


7月12-13日,1泊2日の日程で学生ベンチャー合宿に付いてきています。本来は引率らしいのですが。

これは三重県の若者企業風土育成事業の助成を受けて実施しているもので,三重大生,名大生,名城大生,南山大生,佛教大生,名古屋商科大生,あと県や起業家などの推進スタッフからなる混成チームです。私が付いていくこととなったのは三重大学の共通教育で「アントレプレナー論」という講義を企画し,その講義を依頼した講師の方がこの合宿を企画されたことによります。

初日の本日(もう昨日か…)は熊野商店街の状況の見学,あまご屋
http://www7.ocn.ne.jp/~mieamago/
を見学しました。その上で,熊野市の活性化につながるビジネスプランを学生らが4班に分かれて頭をひねっています。この作業は明日も続き,午後3時から三重県熊野庁舎でビジネスプラン・プレゼン大会をすることとなっています。学生らはこの時間も議論伯仲,明日が楽しみです。

見学や検討の模様はブログ
http://kumano.mie1.net/
に随時学生らの携帯からアップされています。


この写真は見学時に見かけた人見知りのワンちゃん。題して「3LDK」。

月曜日, 6月 30, 2008

発明は恋愛に似ている?

6月28日(土)、29日(日)と日本知財学会の第六回年次学術研究発表会日本大学法学部・経済学部キャンパス(東京・水道橋)でありまして参加してきました。

二日目に知財教育分科会セッション「ラウンドテーブル 知財教育を推進するために」というのを分科会で企画・実施しました。来場者と共に3班に分かれて知財教育について討論、最後に発表し合うという形式です。三重県のローカル新聞が取材に来ていて、その記者(女性)にも討論に加わっていただきました。その記者に水を向けたところ返ってきたのが標記の素敵なエピソードでした。

新聞社の社長が発明に関わることをしていて、その社長がおっしゃるには「発明というのは恋愛に似ている。失敗もするが、思い出すのはうまくいったときばかり。熱中もする。」というようなことだったと思います。

業務命令で何かアイデアを出せ、と言われ何も出てこない状態では産みの苦しみを味わうこととなりますが、何かできそう、という段階になると夢中になります。そうしたプロセスを擬似的にも味わうことができれば発明がどういうことかわかりますし、その発明を大事にする考え方、取り扱う法律の意義もわかるし、知識も必要になると言うことが身をもって理解できますね。

水曜日, 6月 25, 2008

吉田選手のV2に向けて。エール!

北京オリンピックにレスリング女子55キロ級日本代表として出場する津市(一志)出身の吉田沙保里選手の壮行会が昨日津市内であり、参加してきました。趣味のアーチェリーの関係で津市体育協会の常任理事をしていることによるものです。集まったのは250人!盛会でした。

お父さんがレスリングの国体選手、お母さんもテニスをたしなまれるスポーツ一家で、ご自宅にレスリング道場を作り地域に貢献されているのはよく知られています。不案内で沙保里選手だけ突出しているのかと思ったら応援にかけつけた同道場のちびっ子レスラーもすごくてジュニアはすでに国内優勝、キッズの試合はこれからですが、おそらく大活躍が期待されるということで、すごいなと思いました。

帰宅したら我が津市アーチェリー協会所属の高野さんが6月20日~22日に開催された全日本フィールド選手権で優勝、世界フィールドへの切符を手に入れたとの連絡が飛び込んできました。こちらはどんな祝勝会、壮行会をしたものか…。嬉しい悲鳴を上げているところです。

金曜日, 6月 20, 2008

等角図に熱中

三重大学は3年次9月の4週間教育実習に続き4年次の今の時期に2週間教育実習をするのですが,その教育実習生の授業参観時に標記の状況に出くわしました。中学一年生の技術・家庭科技術分野の製図に関する授業です。

前時は(立体を一面を寸法どおりに描き奥行きを右斜め上45°の線で表現するという)キャビネット図のかき方を学習し,本時は(立体を右45°上方45°から見たような形で表現する)等角図のかき方の学習でした。

先回のキャビネット図のおさらいと今回の等角図のポイントの説明は普通の授業でした。そのあとプリントの問題に取りかかってしばらくして教室の様子が変わってきました。プリントの問題は3問で1問目は等角図風のスケッチから正確な等角図を作成するもの,2問目は等角図風のスケッチから正確な等角図を作成する点は同じだけれども斜めの面が追加されたものでした。等角図の基本は簡単で,ここまではほぼ全員がすぐできて,おそらく「等角図なんて簡単,完全にマスターした」と思ったと思います。問題は3問目です。キャビネット図風に描かれた平屋の日本家屋風のスケッチを等角図に描き直すというものでした。この問題は

・2問目までと異なり,キャビネット図風のものを等角図に描き直す
・2問目の斜めを表現する線の始点と終点は斜めの面でない面から簡単に求められたのに対し,3問目は独自に求めないといけない
・それを求めるには補助線を要する

ということで,難易度の点で2問目からのギャップが大きく,つまずくのではと予期していました。
予想どおり,しばらく個別に考えたり周りと相談していたりする時間が続き,次いで「わからん」「ムズい」という発言が続きました。その後「先生,これでええの」「ちょっと違う」,「先生,できた!」「惜しい」,「はい,先生」「全然ちゃう」というやりとりが続いて段々教室全体が盛り上がってきて,後半は収拾がつかないほどの挙手の嵐となりました。

「先生,見て」「あとで答え合わせをするので,できたと思ったら追加プリントの問題に取りかかって下さい」「いやや,先生に見てほしい」

「できた!」「正解!」「やったー!」「出来た人は分からない人に教えたって」

(あちこちから)「先生,教えて」「どうしても分からない人は飛ばして,追加プリントの方をやっていて下さい」「いやや,これをやりたい」

といった調子で,島田紳助のクイズ番組みたいな雰囲気でした。授業参観者もみんな見ていて面白かったと言っていました。時間配分にミスがあって2問目の答え合わせが終わったところでチャイムが鳴ってしまったのですが「肝心の3問目を教えてくれな困る。急いで答えを描いて。」と生徒に請われて時間延長して答え合わせをするおまけも付きました。
わかったつもり,すぐできそうでそうでない課題設定と,授業の持って行き方次第でこのようになるのですね。

技術分野ではロボット作りの作業でうまく持っていくと生徒が熱中するのは知られています。立体的なものを扱うのが普通の技術分野において,どちらかというと地味かなと思う製図の学習でこのように生徒が熱中するのを見て興味深く思いました。チクセントミハイの言うフロー状態というものですね。