火曜日, 3月 13, 2007

科学と音楽の夕べ~日本の芸術と科学~

3/2(金)夜
愛知県芸術劇場
にて標記の催しものがありました。
http://www.sci-news.co.jp/ongaku070302/
少し時間が経ってしまいましたが、とても良かったので書き込んでおきます。

特別講演 「知覚を超える音の地平」では
「音が人間に与える効果について、人間に知覚できない高周波やゆらぎ構造が脳に与える影響を主題に講演する。インドネシアの民族楽器ガムランのデモンストレーションを交え、和楽器と洋楽器(箏とハープ、尺八とフルート等)の違いを科学的手法により解析しつつ、人間の感性に与える邦楽の魅力を解き明かす。」
とあります。

イントロのお話し:岡崎統合バイオサイエンスセンターの永山氏によるモルフォ蝶の鮮やかな青色の秘密、それからプリズムで白色光を虹色に分解したニュートンの実験をさしてのある詩人の「ニュートンは虹を壊した」、ファインマンの「科学者は普通の人以上に美しいものを見ている」論争の紹介も面白かったのですが、メインはやはり国際科学振興財団の大橋氏(=芸能山城組の山城氏)の可聴域よりも高い周波数の音に関する研究紹介と実演でした。

・可聴域は良く聞こえる人でも22,000ヘルツ程度までですが、100,000ヘルツまでの周波数成分を含む音楽を聴くと、視床下部他脳内のいくつかの部分の血流が良くなる(PETによる)、麻薬と同様にドーパミン等が分泌される、免疫力が高まる。PET:ポジトロン断層法というのは微量ですが放射性物質を血液に注入して調べるもので、すごい実験をしたものですね。

・ヘッドホンで可聴域と可聴域以上の両方の音を聴かせても上記の現象は起こらない。ヘッドホンで可聴域を、可聴域以上の音は別にスピーカーで再生すると上記の現象は起こる。つまり可聴域以上の音は耳では聴いていなくて、身体で「感じて」いる。【以下私の解釈】可聴域以上の成分についてはその振動で全身マッサージのようになって毛細血管内の血流が良くなる、体内の化学反応が促進される、あるいはミクロな生体電位が揺さぶられてそれが心地よい刺激として脳に伝えられるとか言うことで、音楽性とは無関係なのかなと思います。音楽を聴かせると植物の成長が良いというのも同様。人間の場合、可聴域の良い音楽と、可聴域以上の刺激が同時にあると、相乗作用はあるかも知れませんが。

・ME(最大エントロピー)スペクトルで100,000ヘルツまでの周波数成分を調べると、箏、尺八、バリ島のガムラン(鉄琴のような楽器)は可聴域以上に良く伸びており、かつ西洋音楽と異なりそれがうねるようにダイナミックな変化をする。特にガムランは高い周波数まで伸びている。箏の奏者が練習で調子が出てくると可聴域以上の成分が増える。西洋楽器はほとんど可聴域内の音に留まっている。チェンバロは可聴域以上の成分もかなり出ていたがピアノはあまり出ない。

ガムラン、箏、尺八の実演では特にガムランがすばらしいと思いました。高い周波数成分ほど衣類など障害物で簡単に遮られてしまいますが、バリ島の人達は半裸状態で演奏し、聴くわけですからそれこそ身体全体で音楽を受け止めてトランス状態(その際脳波で強いα波が出ることも紹介)に入っていくんでしょうね。日本の風鈴の音も可聴域以上の成分を含んでいると思います。そうすると夏にステテコとか半裸状態で風鈴を聴きながら昼寝をするというのは心、体共にとても良い習慣だったと言うことになりますかね。「風鈴が頭によい」と無理に結論づけたテレビ番組が問題になりましたけれども、風鈴は悪くない、風鈴の音が心地よいことに変わりはありません。