金曜日, 7月 27, 2007

技術科の意義

日本では中学校だけに,しかも「技術・家庭科」という一つの教科の中に技術分野があるだけの(通称)技術科ですが,こんなことをしているのは先進国では日本だけです。イギリスなどは小学校から高校まで必修の技術があります。さすが産業革命を起こした国ですね。

最近は「理科でもものづくりを行っている」「理科でも科学技術の対応をしている」ということで特に技術科を設けなくてもいいのではないか,などと技術科の陰がさらに薄くなってしまいそうな雰囲気もあります。

そんなものでしょうか。

理科で行うものづくりは(大まかに言えば)原理を理解するためのものづくりであり,技術で行うものづくりは既知の原理からいかに役に立つものを創るか,にあり,視点が全く異なります。例えばハイブリッドカーやiPodはこれらが開発された時点で使われている技術の原理はほとんど既知だったはずです。役に立つものとなると試作してみて不都合を「改良」する必要があります。原理的には良くても市場には受け入れられず,ボツとなる場合もあります。「生産性」,「採算性」,「デザイン」も含めて良いものとしなければなりません。「」の部分は理科では取り上げられない,つまり理科の範囲ではハイブリッドカーやiPodは出てこない,少なくとも出にくく,よほどこうした点の意義を認める理科の教師でないと技術的な本質を教えられないと思います。

人間の歴史を見ると道具を発明し,火をコントロールするところあたりが起源となります。その時には力学や,燃焼の化学は知らなかったはずです。つまり理科よりも技術の方が歴史が長く,もっと言えば技術は人間らしい営みの根本であることが見えてきます。

もちろん技術だけでいいということはありません。正しく技術を操るにはその根本原理:理科の理解が必要です。

このように理科教育と技術教育は相補的な関係にあるはず,なのに日本はあまりにも技術教育を軽視している,というのが私の主張です。

土曜日, 7月 21, 2007

柏崎刈羽原子力発電所

新潟にあっては再び大地震に見舞われました。被災地の皆さんにお見舞い申し上げます。

今回の新潟県中越沖地震では柏崎刈羽原子力発電所がトラブルに見舞われました。これについてはいろいろな見方があると思います。原子力に関わっていた(日本原子力研究所に15年間勤めていた。但し,研究は核融合技術開発。)身としては一般の方とは少し見方が違うかと思います。

・微量の放射能漏れがあったものの,全体としてこれだけの地震に対し,「原子力」の観点からは被害は大したことはない。周辺への影響もないに等しい。頑丈な建物に覆われて良くわかりませんが,原子力発電所の中身は配管が複雑に入り組んだ石油コンビナートのような構造です。石油コンビナートで同じ地震に見舞われたらもっと大変な事になったのではないでしょうか。

・しかし設計値の倍以上の地震動を受けたという事実は重大。工学設計の前提条件を覆す事態。

・燃料棒を保存するプールの水(わずかに放射化)が揺れて溢れて施設外に排出されたのが想定外とはどういうことか(そんなの当たり前ですよね。簡単なところでまだ設計に穴があるということでしょうか。多分あまり大事に至らない部分だけとは思いますが。)。

・変圧器が燃えたのはいけないですね。「設計値を大幅に超える地震動」が主原因でしょうが,他の変電所等ではそうした事態に至っていないことから,何らかの設計施工ミスが疑われます。消火が遅れたのも何とかならないのか,これはあの映像を見れば誰もが思うことだと思います。

報道を見ますと東京電力がやり玉の対象みたいですが,東京電力さんもどちらかと言うと被害者です。地震そのものと,自然現象を対象とした設計等がなかなかうまくはゆかないと言うことに対する。

全国の原子力発電所に及ぶ問題で事は大きいです。地震大国におけるエネルギー政策の難しさを痛感します。

高等教育予算

7月20日の朝日新聞の「私の視点」に三重大学の豊田学長が「大学病院 手を打たねば機能低下進む」と題して一律の交付金削減に対し,地方大学の病院経営地域医療の窮状を訴えています。具体的な数値が挙げられており,非常に納得できる主張であると思いますが,いかがでしょうか。

豊田さんは医学部出身の学長さんで(今回は)病院に焦点を当てての論の展開ですが,お話しとしては大学全体につながるものであると思います。

高等教育予算を巡っては様々な議論がありましょうが

GDPに占める高等教育予算の割合が

日本     0.5%
米国     1.1%
英国     1.0%
OECD平均 1.2%
(教育指標の国際比較 平成16年度版)

を示せば十分ではないでしょうか。大枠がとにかく小さすぎます。それで様々な問題が起こっているわけで分配を少々どうしようと言ってもだめですね。今提供されている予算は教育研究遂行上すべて維持費,それも不足状態と言っていいと思います。国立大学法人には古びて耐震強度の足りない建物がたくさん残っている状況をちょっと見てもらえばわかります。